🄫2019 つれづれ推進委員会

うみべの出来事

  • うみべの出来事
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  • ナユタ
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作詞・作曲:本多白紙

​編曲:ailuroad

午前4時 青い海
溢れるくらい借り物の世界に 
2月に吐いた息はこの部屋を飾ったの

誰にも似てない私は誰なの
仲間外れ  間違い探し


いつか欠くした彼方の影法師は
待ってるから呆れるくらい に

朝が差し込んで君を待っていました
神様いないなら「私が光になるから」
君は声を紡いで私の名前を呼ぶの
静かな夜明けと海岸通り2人の影

「あなたの個性はどこなの?」って
一体全体言われましても
「私の手札はこれだけなんです」ガラスの靴など履けやしないの
「私の心は誰が触っても救われはしないの」なんて

君を待っていました 声は泣いていました
「神様、私は今日から1人になるから」
明日も声を繋いで彼方の名前を呼ぶよ
静かな海辺に辿り着く2人のこと

うみべの出来事ができるまで

本多白紙

 大学1年の2月、慌ただしい都会の雰囲気に埋もれかけていた頃。池袋で飲んだ帰り道、終電を急ぐ人達の中で、電光掲示板に映る鎌倉という文字に魅せられて、私の終電は池袋発鎌倉行きになりました。

 湘南新宿ラインに揺られ、鎌倉に降り立ったのは23時、観光地だからなんとなく大丈夫だろう思っていた期待は裏切られ、駅前のマックとコンビニ以外のお店は見つけられませんでした。鎌倉という情緒あふれた町で朝までマックはないなと思い、藤沢まで歩くことにしました。

 当時はスマホなどなく、ガラケーのデフォルメされたアバウトな地図情報だけが頼りでした。携帯の充電は30%しかなく、自分の進む方向を確認してはすぐ電源を切って歩くというつたないことを繰り返して歩きました。

 茅ヶ崎の海岸通りで走り屋が僕の横を何台も走り抜けていき怖かったこと、来ないとわかっていてもひかれて死んだらどうしようと思いながら江の電の線路をスタンドバイミーしたこと、極楽寺の駅前のベンチで飲んだジョージアのエメマンがとても暖かかったこと、午前4時の江の島の海岸はナンパ野郎のものではなく自分のものだと思えたこと、これが私の「うみべの出来事」です。

 さて「存在」と言われて思い浮かんだのは「アイデンティティ」でした。自己の存在を確立するために様々な方法がありますが、私は自分の内面で確立させることがいいと考えています。

 そのためのエッセンスとして自分だけの景色であったり、自分だけの思い出があって、それは他人に評価されて価値が決まるものではないということが情報社会の波に埋もれかけている人に届けばいいなと思ってこの曲を歌っています。

楽曲をより良くするために

ailuroad

 「うみべの出来事」を制作するにあたって、主に編曲を担当したailuroadです。本名でばかり呼ばれるのでアーティストネームが定着しません。気軽に”アイルさん”などと呼んで頂けたらなと思っております。馴染みが無さ過ぎて反応出来るかは怪しい所ですが。

 主な編曲は私が務めていますが、「うみべの出来事」と言う曲自体はナユタがバンドとして活動していた頃からありました。メロディのみを残して全く別のアレンジに再構築する事も可能でしたが、現状考え得る範囲で最も理想に近いのがもともとのアレンジだった為、そこに肉付けしていくイメージで作業を進めました。


 最も力を入れたのはイントロからAメロの流れです。”午前四時 青い海”と始まるこの曲は、そこの雰囲気作りが上手くいくかで印象がほぼ決まるのだと思いました。走り出したくなるような爽やかさを感じて欲しい。しかしその中に、夜明け前の僅かな時間にのみ存在する静謐さを混ぜたい。どうすればいいのか。そこに苦心しました。


 最後まで悩んだのはギターの音色でした。ほとんど常に鳴っている楽器のサウンドは、そのままその曲の質感を左右します。どのくらいの大きさで鳴らすのか、あるいは鳴らさないのか。シンプルなコード進行だけに、鳴っている楽器の差し引きはかなり重要でした。


 この曲を聴いた時に「朝方の海の見える景色」を思い浮かべられた方がいらっしゃれば、それはこの上なく喜ばしい事です。