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才能とイデア

作詞・作曲:玄徒ハクビ

​編曲:ailuroad

Kiss me  kiss me 
揺れながらも
Tell me  Tell me
愛してると言った言葉を
多分、まだ...


朝が鳴いたら終わりにしよう
わからないけど今日も待つ批評
星の数だけ未来はあると
笑ってみる

目を瞑ったら思い出したの
手を繋いでいて眠れるまで
情けないよね涙が出たら
おやすみ

不確かな才能とイデア
応えてよ、戻らない愛で
貴女を壊さないように
僕は蓋をしてしまう
僕達は迷子、夢の先に
矛盾であふれる複数の解
桜が咲く頃には

誰かのために生きていくのが
大人なんだと言い聞かせてよ
情け無いよね
僕が未来を望んだはずなのに

 


変だな僕はね
僕でしかないんだね
そうだね君はね
君でしかないんだね

離れないで、行かないで
伝え損なった言葉は4月の春風に溶けてゆく

不確かな才能とイデア
わかったよ、戻らない愛と
貴女を壊さないように
僕は蓋をしてしまう

僕達は迷子、背中を向け
君なら行けるさ、夢の先へ
離れる二人の平行線
歩んでゆくよ、忘れないように

君は愛に気づきますか
僕の声は届きますか
君は愛に気づきますか
僕の声は届いてるかな

青春のエピローグ

玄徒ハクビ

青春を一言で語るとするならば
僕の場合「才能とイデア」という言葉に辿り着く
才能という雲をも掴むような不定形の存在に身を焦がし
イデアという抽象的な概念で具体的なその誰かに「愛してる」と言ってもらいたくてダサくてつたない言葉遊びを夜が更けるまで繰り返した
しかし現実は思ったよりも残酷で自分が期待した才能で世界が変わることはなく、価値があると信じて歌い続けたイデアで愛する人達が心から笑顔になる日は待てど暮らせど来なかった

 

そんな鬱々とした日々に2つの転機が訪れる
一つは学生生活の終わりである
大学の頃は同じ髪型で同じ服装をした同級生たちが姿勢を正して整然と並ぶ姿が気持ち悪く、就職説明会を5分で抜け出すなど就職することなど微塵も考えず、勉学と音楽に励むために当たり前のように大学院に進んだが、そこから学問を究めて教授を目指す気にはなれず、音楽も始めたころより才能の原石が曇っているように見えて、このまま同じ日々を繰り返すことにも戸惑いを感じていた
しかし酸いも甘いも学び続けた自由な生活から、何かしら社会のお役に立ちながら生きる新しい道を選ばなければいけない時間は刻々と迫っていた

それと期を同じくして起こったもう一つの転機が祖母との別れだ
僕が何不自由なく健康でそこそこの基礎学力もあって、人を想う気持ちや社会的常識もそれなりに身についた変人という魅力的な人間になれたのも幼少期に祖母が大事に面倒を見てくれたからである
恐らく祖母の優しさなければ社会性の欠如したサイコに成り下り、自分の一方的な正義を振りかざして塀の中で暮らす人生も想像に難くないと割と本気で思っている

そんな祖母がある日悩んでいる様子を気にかけて“働き先も決まらぬようでは心配で寿命が縮んでしまうわい”と電話をかけてきた
自身も半年ほど前から病を患い闘病中の身なのにも関わらず、僕の将来のことで不安にさせてしまっていることに引け目を感じとりあえず就職活動をはじめることにした
祖母の後押しもあってか太陽の熱さが静まりかけてきた8月の終わりに祖母と同じ業種で内定をもらうことができ、その旨を病室で伝えると涙を流して喜び、目一杯の笑顔で褒めてくれた
あの時の祖母の笑顔は一生忘れることはないと思う
そしてその2週間後に祖母は他界した

悲しいという感情が芽生えることはなく、ただこの感情から離れたくないという気持ちと祖母を心血注いできた音楽では笑顔にできず、就職というごく一般的な誰にでもできるやり方でしか笑顔にできなかった敗北感と地元に戻ることで苦楽を共にしてきた愛すべきメンバー達と音楽が続けられなくなることの絶望とがぐちゃぐちゃになって全てを終わらせたいと思った
つまりこの歌は自分の青春に終止符を打つために書いた曲であった

しかし、不思議なことにこの歌で終止符が打たれることはなく、今もつたない言葉と変わらぬ面子で音楽を続けている
それは僕にとって幸せこの上ない道であり、あの日の祖母の言葉がなければ今こうやって文章を書いている未来はなかったと思う
最後の最後まで祖母に甘えっぱなしの人生だ

先日、あるクリエイターさんから”ナユタさんってホント青春してますよね”と言われた
それまで青春はとっくに終わっていて、細々と脇道で道草をしているつもりでいた
けれど、側から見たら僕らはまだ青春のど真ん中を走っているらしい
ならばとことん青春を引き延ばせるだけ引き延ばしてみようじゃないかと
恥ずかしげもなく才能とイデアを信じ続けて走り抜いてやろうじゃないかと
そんな僕のどうでもいい戯言に二人はいつも笑っている
僕らの青春のエピローグはまだまだ終わることなく続いていく

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