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うみべの出来事

吉岡大地

小説を読む

うみべの出来事を書いて

吉岡大地

 本作を書きはじめたころ、友人に「今度、真夜中の海を見に行こう」と誘われました。友人は僕が本作を執筆をしているとは知らず、本当に偶然の誘いでした。

 「うみべの出来事」を書こうとしている僕にとっては願ってもないこと。すぐに誘いに乗り、数日後に真夜中の海へ向かいました。

 僕は普段、海を見に行きたいと思うことはないのですが、妙な縁があって、本作を書く前後に何回か海を見に行きました。その度に海辺の雰囲気を感じ、これを表現してみたいなと思うようになりました。自分で「うみべの出来事」を読み返したとき、あの鎌倉の海、九十九里の海、葉山の海を思い出せたら、とても素敵じゃないかと。

 

 『「存在」について』というテーマで書かれた本作ですが、存在についてと一言で言っても、たくさんの解釈があると思います。それに理由を求めたり、定義を求めたり、そもそもそんなものあるのかと懐疑してみたり。

 しかし、そのような具体的な問いかけは、作中ではしないと決めていました。

 好きでもない惣菜パンを食べてみたり、好きな絵を描く人のことを話してみたり、友達と中身のない会話をしてみたり、かと思えば傷つけ合うくらいの喧嘩をしたり。

 日常を生きていく中で、存在という言葉で考えずとも、いつの間にかそれについて考え、言葉にせずとも答えを出してバランスを保っていく。そういった、何気ない場所に隠れている『「存在」について』を、本作を読んで思い出してもらえたらと思っています。

 最後に、「うみべの出来事」を読んでくださり本当にありがとうございました。

 不器用に成長する主人公たちが、あなたにとっての「青春時代」をよりよいものにできることを願って、このあとがきを締めさせていただきます。

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